いざモバイル対応サイトを制作するとなった場合、大きく分けると2 つの方法が考えられます。1つはPCサイトとは別に「モバイル専用サイト」を構築する方法、もう1つはPCサイトと同じHTMLを使用して「レスポンシブ・ウェブデザイン」で構築する方法です。いずれの方法でもモバイル対応サイトを構築することは可能ですが、それぞれメリット、デメリッ卜がありますので、自分が制作するWeb サイトのユーザーにとって、どちらがより望ましいのかよく検討した上で判断する必要があります。
■メリット
モバイル専用サイトを構築する最も大きなメリットは、モバイルユーザーならではの二ーズや行動特性に合わせた最適なコンテンツ構成を提供することが容易な点です。
などのようにユーザーの要望がハッキリしている場合、それに最適化されたサイト設計デザインを自由に行うことができます。またランディングページ等ビジュアル的なインパク卜が重視されるようなサイトにおいても凝った画面デザインがしやすくなります。このように設計デザインの自由度が高いのも専用サイトのメリットとなります。
■デメリット
モバイル専用サイトのデメリッ卜は、制作運用メンテナンスが二度手間となり、コストも高くなりがちという点が挙げられます。特にCMSなどのコンテンツ管理システムを導入していない静的なサイトの場合、運用時の手間はミスにも繋がりやすいので注意が必要です。また、PCサイトもモバイルサイトもほとんど同じような内容だった場合は特に、「手間がかかる」というデメリットばかりが際立つことになります。
■メリット
レスポンシブ・ウェブデザインでサイトを構築する最も大きなメリットは、PC・モバイル問わず全てのユーザに対して同ーのコンテンツ情報を発信しやすいことです。情報発信が主目的のWebサイトの場合は、基本的にPCユーザーとモバイルユーザーのサイト閲覧目的に大きな違いはありません。であれば同じHTMLを使って同一内容を掲載しておき、cssで画面サイズに応じたレイアウトやUI設計のみを柔軟に調整するレスポンシブ・ウェブデザインは、情報発信系のWebサイトにとっても最も手早くスマー卜にマルチデバイス対応できる制作手法として推奨できる方法であると言えます。
■デメリット
レスポンシブウェブデザインの主なデメリッ卜は、PC・モバイルで同じHTMLを使用することによる技面的な制約がありうるという点です。モバイル専用サイトと違い、基本的に同じHTML構造を用いてcssでデザインレイアウト変更を行いますので、作りたいデザイン・レイアウトによっては実現が技術的に不可能ということもあり得ます。その場合は部分的にビジュアル面で妥協せざるを得ないということもあるかもしれません。サイト構築にかかわる全ての担当者(クライアン卜も含む)がそのことを理解した上で、プロジェクトに取り組む必要があります。
このように、専用サイトを構築することとレスポンシブ・ウェブデザインで構築することのメリット・デメリットは裏表の関係のような形となっています。まずは自らのWebサイトがどちらの手法に向いているか(どちらの手法がよりユーザーに高い価値を提供できるか)を判断し、その上で可能な限りデメリッ卜を軽減するための対策を講じるようにすると良いでしょう。
■モバイル専用/レスポンシブサイトの比較

PCサイトもモバイルサイトも制作の流れは基本的に変わりませんが、モバイル対応サイトを制作する際にはいくつかPCサイト時にはなかった準備やお約束の記述などが必要となってきます。
モバイルサイトのデザインカンプを作成する際には、Retinaディスプレイ用の素材を作る意味でも原寸の2倍サイズで力ンプを作ることになります。これまでは320csspx 基準× 2 倍= 640px で作るのが普通でしたが、iPhone6の登場で375csspx 基準× 2 倍= 750px で作る方が良いという流れも出てきています。どちらで力ンプを作っても良いですが、いずれの場合も「全てのサイズを2の倍数で作成すること」と、「320px~640px程度の幅で横幅可変になること」の2点に注意してデザインするようにしてください。
既に説明した通り、モバイル向けサイトの場合には必ずviewportの設定が必要となります。基本的には、

としておけば良いかと思います。
この状態にした場合、ユーザーのピンチイン・ピンチアウトによる拡大・縮小が許可されます。「initial-scale=1」は初期状態での拡縮比率を等倍とするための指定ですが、基本的には記述しなくても初期状態は等倍となるのが普通ですので、今は念のための記述という意味合いが強くなっています。
なお、何らかの事情でユーザーによるピンチイン・ピンチアウトを許可したくない場合には以下のようにviewportを記述することもあります。

古いiOSやAndroidのブラウザは、ピンチイン/アウトができる状態だとposition:fixed;が機能しないなど、レイアウト崩れの原因になることが多かったため、比較的古いスマホ専用サイトなどでこの記述が多く見られました。しかし制作の都合でユーザー操作の自由を制限することは好ましくないため、よほど致命的な問題が発生するのでもなければ拡大縮小の禁止はしないことをお勧めします。
※iOS 10より拡大縮小の禁止をする「user-scalable=no」が無効化されました。
i0S5以前のiPhoneでは横向き(landscape)にした時に画面全体が約1.5倍に拡大表示となるため、 これを避けるために「initial-scale=1」を記述していました。この回転時の拡大仕様はiOS6から改善されたため、今では特に記述しなくても問題ありません。
iPhoneやAndroidのブラウザには縦向きと横向きで文字サイズを自動調整する機能があり、横向きにした際に文字が拡大されるようになっています。文字が大きくなることによって1行あたりの文字数が少なくなり読みやすくなるため、このような機能が搭載されているものと思われます。しかし1画面に入る情報量が減ってしまうことや、画像と文字の間でデザインバランスが崩れてしまうこと等から、一般的にこの機能はオフにするのが慣例です。
文字サイズ自動調節機能をオフにするには、cssで以下のように指定します。

iPhoneにはテキスト中に電話番号があると自動的にリンクを作成し、タップで電話できるようにする機能があります。しかし電話番号とFAX番号は区別できませんし、電話番号ではない数字であっても配列が似ていると誤認識してリンクを作ってしまうため、通常この機能はmetaタグでオフにしておきます。

PCサイトとは別にモバイル専用サイトを制作する場合には、URLの正規化を行う必要があります。URL正規化とは、異なるURLを持つWebページの内容が同じ、もしくはほぼ同じ内容だった場合に、検索エンジンから「重複コンテンツ」とみなされてSEO上不利な扱いを受けてしまうことが無いよう、オリジナルのURLを指定しておくことを指します。
PCサイトとモバイルサイトを別々に作っており、URLも異なるような場合には、次のような処理をしてPC用とモバイル用のページを1対1で参照できるようにしておく必要があります。例えば
だった場合には以下のようにそれぞれのページに対してURL正規化を記述を入れておくようにします。
① rel="alternate"でスマホ用ページの存在を明示する
まず、「PC用サイト」のHTMLにrel="alternate"という属性を使用してスマートフォン用のページが別に存在することを検索エンジンに対して伝えます。
※alternate(代わりの)

② rel="canonical"でPCサイトのURL紐付ける
次に「モバイル用サイト」のHTMLにrel="canonical"でそのページに対応するPC用URLを紐付けし、URLを正規化します。
※canonical(標準的な)

この正規化の処理は、PC用ページとモバイル用ページを1対1で紐付けし、正しくクロール、インデックスしてもらうためのものですので、1ページずつ全てのページを正確に紐付けする必要があります。ただし、PC/モバイルどちらか一方にしか存在しないページの場合は無理に正規化する必要はありません。また、これは「モバイル専用サイト」で「PCサイトと表示されるURLが異なる」場合に行うものになりますので、レスポンシブ・ウェブデザインで構築している場合や、.htaccessなどサーバ側の設定でURLを統一している場合には記述する必要はありません。
PCサイトのfaviconのように、モバイル端末ではWebサイトへのショートカットを「ホームアイコン」としてデバイスのホーム画面に登録できます。
特別な指定をしなければWebサイトの画面キャプチャがホームアイコンとして自動的に使われるため、それで良ければ特に何もする必要はありませんが、専用画像を用意したほうが見栄えが良くなるため、できれば対応することをお勧めします。

■ホームアイコンの有無
ホームアイコン用に用意する画像はpng形式の正方形の画像で、厳密には端末によって適合サイズが異なります。しかし適合サイズが無くても端末側が存在するホームアイコンの中から適宜選んで表示してくれるので、手間を省きたければ一番大きなサイズだけ用意しておくのでも構いません。

■iOS端末のホームアイコン必要サイズ
iOSデバイスは、「apple-touch-icon.png」という名前のpng画像を入れておけば自動認識してホームアイコンとして使用してくれます。しかしAndroidではHTMLに<link rel="apple-touch-icon"~>の記述をしないと読んでくれません。またAndroid Chrome はこの記述が将来的にサポー卜されなくなる可能性があるということですので、Google推奨の<link rel="icon"~>という記述をしておく方が無難です。

なお、PC用のfaviconとモバイル用のホームアイコンを1 つの元画像から一式作成し、更にHTMLへの設置記述まで一発で作成してくれる便利なWebサービスもありますので、こういったツールを活用するのも良いでしょう。
モバイル対応サイト制作の場合、制作の途中段階で何か修正するたびにいちいちFTPでサーバにアップロードして、複数の実機でURLを打ち込んで再読み込みしてとやっていたのでは手間がかかって仕方がありません。最終的な動作確認は実機でする必要がありますが、ある程度形になるまでの間の表示確認はコーデイング作業をしているPC環境で手軽に済ませてしまうのもひとつの方法です。
iOSやAndroidのブラウザはWebkitであり、中身はSafariやChromeに近いものになります。従って-webkit-プレフィクスの有無など、事前にある程度モバイルブラウザ側の癖に注意しながらコーディングしておけば、途中段階の表示確認についてはデスクトップ用のSafariやChomeのブラウザ幅を狭くしたりしながらの確認でもさほど問題ありません。
ただ、SafariやChromeは400pxより幅を狭くすることはできないため、より実機の表示領域に近い状態で確認ができるよう、Chromeデベロッパーツールのデバイスモード機能を活用することをお勧めします。
使い方は次の通りいたって簡単です。
■デベロッパーモード機能の使い方(画面はMac版)

①デベロッパーツールを起動

②デバイスモードを起動

③エミュレートしたいデバイスを選択

④再読み込みして各デバイス表示を確認
今からモバイルサイトを構築するのであれば、少なくとも先に紹介したGoogleモバイルフレンドリーテストに合格できる内容で制作するようにした方が良いでしょう。もちろんこれはモバイル対応のゴールではなく、スター卜地点にすぎません。これにパスしたからといってコンテンツ内容が薄くユーザーにとって価値の無い情報であればそれは全く意味がありませんし、これだけでモバイルに最適なUIが提供されていると判断することもできません。ですが、最低限の守るべき指標として客観的な判断基準となるという意味では非常に分かりやすいので、どんな手法で制作するとしても、次の5つの条件は満たすようにしておきましょう。
1.タップ要素同士が近くなりすぎないようにする
Appleのガイドラインではタップ(リンク)領域は最低44×44pxを推奨していますが、Googleのガイドラインでは48×48px以上を推奨しています。またひとつひとつのタップ領域が48×48px以上あったとしても、それらがピッタリくっつくような状態で配置されている場合、誤って隣を触ってしまうことがあるので、十分な余白を取るように心がけてください。
2.拡大しなければ読めないような小さな文字にしない
使用するフォントサイズはユーザーが拡大しなくても読める十分なサイズを確保するようにしましょう。
12~16px程度あれば問題ありません。
3.モバイル用のviewportを設定する
様々な画面幅のデバイスで問題なくコンテンツが表示されるよう、HTMLにはviewportを設定してください。基本的にwidthは固定値より"device-width"の方が推奨されます(固定値が絶対にダメというわけではありませんが、固定値にしたことによってモバイル環境の表示に悪影響が出る場合には修正項目として指摘される可能性があります) 。
4.コンテンツがviewportからはみ出さないようにする
viewportの値が「width=device-width」となっていても、HTML要素や画像に固定値が設定されているとコンテンツがviewportからはみ出してしまう場合があります。HTML要素のwidthは基本的にautoか%指定、画像にはmax-width:100%;を設定するようにしておきましょう。
なお固定幅のネット広告は基本的にユーザー側で幅を可変にすることはできないため、可変幅の広告に切り替えるか、PCとモバイルでコンテンツの出し分けをする等の対策が必要となります。
5.Flashを使用しない
ほとんどのモバイルブラウザはFlashに対応していませんので、Flashコンテンツは使わず、HTML5+CSS3+JavaScriptで対応するようにしましょう。
既存サイトのモバイルフレンドリー対策
全面リニューアルでモバイル対応サイトを構築する場合は良いのですが、そこまでする時間的・金銭的余裕がないため、とりあえず応急処置的にモバイルフレンドリーテスト対策をとりたいというニーズもあるかと思います。
モバイルフレンドリーテストは「ページ単位」で行われるため、そのような場合はまず既存サイトのアクセス解析を行って、モバイルユーザからの流入・コンバージョンの多いページのみを優先的に改修するという選択肢を取っても良いかもしれません。ただし、サイト全体のうち一部のみがスマホ対応で他はPCのままという状態を長く続けるのはユーザーにとってあまり好ましい状態は言えませんので、折を見て全面的な改修・リニューアルを検討した方が良いと思われます。モバイル対応というのはGoogleのために行うのではなく、あくまでユーザーのために行うものであるということを忘れないようにしてください。
POINT